朝7時20分に出発。途中のコンビニでホットコーヒーを買って、軽く一口。
高速へ入り、伊勢道を玉城で下りる。山道を越えて南伊勢町へ。
南伊勢町エコパークの駐車場に車を停めた。トイレ付きで、5~6台ほどの小さなスペース。
静かな場所だ。

9時20分、自転車を降ろしてスタート。
空は快晴、風はやわらかい。
まずは浜島町迫子を目指して山道を進む。緩やかな登りが続いたかと思えば、突然10%超の急勾配。
まるでジェットコースター。上って下って、また上る。
ようやく海に出たとき、水筒の熱いお茶が渋くてうまかった。
潮の匂いと茶の渋み。妙に相性がいい。

海沿いの道には、海苔の養殖場が点在し、港には漁船がいくつも停泊していた。
「釣り船」「釣具」「釣りエサ」の看板が並び、いかにも海の町という風情。
潮の香が心地よく、ペダルが軽くなる。
浜島の中心部に入ると、温泉ホテルがちらほら。旅の匂いが濃くなる。
大矢浜海水浴場の堤防でひと休み。
海は透き通り、白い砂が底に見える。
波はやさしく、音だけが静かに続いていた。
しばらく佇んで、ただ風に吹かれる。

再出発してすぐ、「ビン玉ロード」に入る。
遊歩道に漁具のガラス玉が並び、夜は灯がともるらしい。
昼の青空の下でも、その丸い硝子玉が光を反射してきれいだ。
海を横目に、歩行者を気にしながらゆっくり走る。
ここは海と人の距離が近い。

しばらく行くと「ツバスの鐘」の看板が見えた。
旧道の峠道に入ってみると、すぐに「磯笛岬展望台」に到着。
見晴らしのいい東屋でひと息つく。
しかし、その先は工事で通行止め。残念ながら峠越えは叶わず、国道に戻った。
いくつかのトンネルを抜けるが、どれも明るくて走りやすい。
田曽浦の漁港に出ると、広い港に釣り人がちらほら。
なにが釣れるのだろうか。のんびりしていていい。
波打ち際すれすれの道を慎重に走る。潮風が肌にまとわりつく。

さらに北上して、トンネルをいくつか抜けたところで、海に近づく細い道を見つけた。
進むと別荘地の入口。
気になって入ってみる。
アップダウンの激しい小道に、古びた家と立派な別荘が点在している。
バブルの頃に開発されたのだろうか。
手入れが行き届かない家もあれば、今も人が暮らしていそうな家もある。
岬の先まで行きたかったが、帰りの登り坂を思って引き返した。
一瞬、非日常に迷い込んだようだった。

再び国道へ戻り、木谷の集落を抜けて南伊勢町エコパークに戻ると、時刻は12時を回っていた。
走行距離は36.3km。獲得標高513m。
短いようで、濃い2時間の旅だった。
帰り道、度会町の「鈴木水産」で昼食をとる。
おまかせあじ定食(1,400円)。
窓際の席で、あじの刺身をひと口。
少しコリっとしていて、それでいて柔らかい。旨味が深い。
焼き牡蠣とヒオウギ貝、ブリの照り焼き、アオサの味噌汁も絶品。
旅の締めにふさわしい昼飯だった。

快晴の空の下、潮風を受け、渋いお茶を飲み、うまい魚で腹を満たす。
――南伊勢のサイクリングは、短いけれど贅沢な時間だった。

